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ビル・キャンベルの成功の教え「1兆ドルコーチ」エリック・シュミットの書評・要約・感想

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「1兆ドルコーチ」は、アップルとグーグルを育てた、ビル・キャンベルさんの伝記です。スティーブ・ジョブズさんの友人であり、グーグル幹部を始め、シリコンバレー中の経営者達をゼロから育て上げ、成功に導きました。

 

 

ビル・キャンベルさんのバイオグラフィー

ウィリアム・ヴィンセント・キャンベル・ジュニア

 

アメリカンフットボールのコーチから転身して、5年も経たずにフォーチュン500社企業の上級幹部になった人。ビル・キャンベルさんは、グーグルの成功にとって、最も重要な人物のひとりです。

 

倒産しかけたアップルを立て直し、スタートアップ企業のひとつでしかなかったグーグルの成長を、非公式コーチとして支えました。

 

1940年生まれ。ペンシルベニア州 ホームステッド出身。高校・大学とアメリカンフットボール選手。

 

1958年 ニューヨーク州のコロンビア大学に入学。3年生の時キャプテンに選ばれ、コロンビア大学史上ただ一度のアイビーリーグ優勝に導く。

1962年 経済学士号、1964年 教育学修士号を取得。

大学卒業後は、ボストンカレッジのアシスタントコーチになるために北へ移る。

1974年 コロンビア大学のヘッドコーチに就任するが、1979年に退任。

 

39歳の時、広告会社ジェイ・ウォルター・トンプソンに就職。

コダックに引き抜かれ、1983年には、ロンドンでヨーロッパの消費財部門の責任者であった。

1983年 アップルに引き抜かれ、アメリカの西海岸に移る。アップルに入社後、9か月でセールス・マーケティング担当副社長に昇格した。

1987年 アップルのソフトウェア部門のクラリスが独立起業になったのを機に、CEOに就任するが、1990年 クラリスはアップルの完全子会社になり、退任。

 

その後GOコーポレーションのCEOに就任するが、1994年に廃業。

1994年 インテュイットのCEOに就任、2000年に退任。(2016年まで会長職)

1997年 スティーブ・ジョブズさんがアップルに復帰したのを機に、スティーブさんより指名を受け、2014年までアップルの取締役を務めた。

 

 2016年4月 75歳の時、がん 永眠。

 

本を読んで分かるビル・キャンベルさんの人柄

とてつもなく寛大な心を持つ、慈愛に満ちた人。マザーテレサのような人。

明確な倫理観を持ち、優しさと厳しさを兼ね備えた人。

経営者としてのキャリアの他に、シリコンバレー中のCEOのコーチ業を、ほぼ無償で行いました。

 

「1兆ドルコーチ」というタイトルは、ビル・キャンベルがシリコンバレーで生み出した価値に敬意を表してつけられた。(訳者あとがき)

彼が育てたアップルとグーグルの時価総額の合計だけでも1兆ドルを優に超えます。

 

シリコンバレーがこれだけ成長し、しかも政治とは無縁の健全な組織運営がおおむねできているのは、ビル・キャンベルの功績によるところが大きい。(訳者あとがき)

健全な組織運営というのは、ビル・キャンベルさんの倫理観によるものだと思います。

 

「1兆ドルコーチ」人物相関

「1兆ドルコーチ」は、3人のグーグル幹部の共著です。ビル・キャンベルさんは、複数のグーグル幹部の非公式コーチを務めた方です。

 

著者の1人であるエリック・シュミットさんが、グーグルのCEOに就任した時に、ジョン・ドーアさんがエリックさんに、ビル・キャンベルさんをコーチにするように勧めました。

 

ジョン・ドーア … クライナー・パーキンスの会長

ビル・キャンベル … クライナー・パーキンスの客員経営者(コーチ)

※ クライナー・パーキンスは、ベンチャーキャピタル企業

 

「1兆ドルコーチ」の3名の著者

エリック・シュミット … グーグルの会長兼CEO

ジョナサン・ローゼンバーグ … グーグルの上級副社長

アラン・イーグル … グーグルのディレクター

ビル・キャンベル … グーグル幹部のコーチ

 

スティーブ・ジョブズさんがアップルを追放された1985年、ビル・キャンベルさんは、スティーブさんの追放に反対した同社幹部でした。スティーブさんは、ビルさんの誠意を忘れず、1997年に再びアップルのCEOに復帰したとき、ビルさんをアップルの取締役に指名しています。

 

ビル・キャンベルさんはスティーブ・ジョブズさんの相談相手であり、コーチ、メンター、友人でした。

 

エリック・シュミットさんの紹介

2001年~2011年まで、グーグル会長兼CEO。2011年~2015年まで、グーグル経営執行役会長。2015年~2018年まで、グーグルの持ち株会社アルファベット経営執行役会長。現在は、グーグルとアルファベットのテクニカルアドバイザーを務めている。

 

↓エリック・シュミットさんの本

 

 

「1兆ドルコーチ」の要約と感想

 序文

Chapter 1 ビルならどうするか?

Chapter 2 マネジャーは肩書がつくる。リーダーは人がつくる

Chapter 3「信頼」の非凡な影響力

Chapter 4 チーム・ファースト

Chapter 5 パワー・オブ・ラブ

Chapter 6 ものさし

謝辞

 

Chapter 2まではビルさんの経歴と、主にリーダーシップについて書かれています。Chapter 3以降は主にコーチングについてと、読む人の心を打つ、人間としての本質的な内容が書かれています。著書の言葉の一つ一つから、ビル・キャンベルさんに対する敬愛・親愛の気持ちが感じとれます。

 

ビル・キャンベルさんという人は、教え子が崖から落ちたら、一緒に崖に落ちてそばにいてくれる人です。ただ単に助けるのではなく、教え子を信頼し、励まし、勇気づけ、教え子自身が、自力で崖から這い上がるように促します。

 

会社を経営する中で、エゴにとらわれがちな心を、倫理(誠意や思いやり、貢献など)の元、正しい決断が出来るように促してくれる人です。

 

ビルは貢献意欲、それも個人的な成功だけでなく組織の大義に貢献する意欲を持っている人を求めた。178ページ

「チーム・ファースト」「チーム・ビルディング」という原理原則は、ビル・キャンベルさんの核をなしている部分です。

 

 

 チーム・ファーストとは 

企業が成功するためには、コミュニティとして機能するチームが欠かせない。個人的な利益よりもチームの利益を優先させ、会社にとってよいことや正しいことを徹底的に追及するチームだ。

 

こうしたコミュニティは、とくに有能で野心的な人たちのあいだには自然に生まれないため、コーチ、それもチームコーチの役割を担う人の介在が欠かせない。273ページ

 

 

チーム・ビルディングとは

人と人との隔たりを埋め、耳を傾け、目をこらし、それから舞台裏での会話を通じてチームを一つにまとめた。173ページ

ビル・キャンベルさんは、職場の人間関係を、友情やコミュニティの領域にまで高めました。

 

舞台裏の一例をあげると、ビル・キャンベルさんは、定期的にエリック・シュミットさんのスタッフミーティングに参加していました。グーグルCEOであるエリックさんは、スタッフミーティングの時に、ビルさんからのアドバイスを受けて、メンバーに近況報告をしてもらっていました。

 

ミーティングが始まる前に、仕事とは関係ない、メンバーの家族の話や、趣味の話、休日の旅行の話などを発言してもらい、みんなで共有します。

 

近況報告をする目的は

1.チームメイトがお互いを知りあえる環境を作るため

2.チームメイトが楽しんでミーティングに参加できるようにするため

 

その他のCEOのミーティングでも、ビル・キャンベルさんは、相手の家族や週末について尋ねたあと、自分の話をしてから本題に入りました。

 

ビルはグーグル社内を歩き回り、人々と知り合った。彼の受け持ちはエリックなどの数人だけでなく、チームだった。彼はチーム全体を向上させた。53ページ

 

ビルは人を大切にした。どんな人にも敬意を持って接し、名前を覚え、温かい言葉をかけた。彼らの家族のことを気にかけ、言葉より行動でそれを示した。235ページ

ビル・キャンベルさんは、従業員だけではなく、その家族にも関心を持ち、家族ぐるみで親しく付き合いました。

 

但し、ビル・キャンベルさんは、コミュニティを作るのが目的だったわけではなく、問題解決能力の高い、強いチームを作るためにこれを行いました。

ビルはコミュニティづくりの話をしたことは一度もなく、いつもチームについて話した。253ページ

 

ビルは本能的にコミュニティをつくった。人々が絆で結ばれとき、集団はずっと強くなれることを知っていたのだ。250ページ

 

 

印象に残ったシーン

ダン・ローゼンスワイグさんは、2010年にChegg(ティッカーコード: CHGG)という米国企業のCEOになりましたが、入社前に、6か月後にはIPOだと聞かされていたのはウソで、実状はあと3か月で破産という、切羽詰まった状態でした。

 

ダンさんは懸命に働き、2013年にIPOを成功させますが、IPO直後に株価は急落し、公募価格を大きく割り込みます。疲れ果てたダンさんは、心の中で辞任を考え始めました。

 

ちょうどその頃、ダンさんを数年前からコーチし、チェグの浮き沈みを乗り越えるのを助けてきたビル・キャンベルさんから電話がありました。

 

ビルは、チェグで踏ん張れとダンを諭した。リーダーが先陣に立たなくてどうする。迷っている暇はない、本気でやるんだ。失敗するのはいいが、中途半端はダメだ。君が本気で取り組まなかったら、誰が本気を出すというのか。やる以上は全力でやれ。213ページ

誰にも言ってないのに、ビル・キャンベルさんにはダン・ローゼンスワイグさんの心の内が透けて見え、誠意と献身に背を向けて逃げるのを、ビルさんは許さなかったんですね。

 

過去にビル・キャンベルさんは、ご自身のCEOの経験の中で、GOコーポレーションを廃業するという決断をしています。その時は、マイクロソフトとの熾烈な競争に敗れ、会社を売却しました。

 

その倫理は、自分たちの仕事と組織を守る為に、新たな売却先の企業に引き継ぐことだったんですね。生み出したプロジェクトと組織に対する責任を果たしたいという。

 

ビル・キャンベルさんにとって、一度生み出した自分たちの仕事を、結果という何らかの着地点に到達させるまでは、辞めるという選択肢はないんですね。

 

ビル・キャンベルさんのコーチングを受けるということは、のび太君を助けるドラえもんとは違うってことです。ベンチャー企業のCEOという仕事がいかに厳しいかというのがすごく理解できました。

 

 

 「1兆ドルコーチ」まとめ

いかがだったでしょうか。ビル・キャンベルさんが大切にしていたことは、一貫して「最高のチームを作ること」「チームで最高の結果を達成すること」でした。

 

彼は、人間関係が信頼の上に築かれることを理解し、一緒に働く人たちの信頼と誠意を得るために力を注いだ。275ページ

最高のチームは深い信頼と、絆で結ばれた人間関係から生まれると、ビルさんは信じてたんですね。

 

ビルさんの倫理というのは、誠実であること、エゴを捨てて、チーム(コミュニティ)に貢献することでした。

 

ビルさんの倫理観をよく表しているエピソードがあります。

2,000年頃、アマゾンの経営が思わしくなかったとき、CEOをジェフ・ベゾスにするか、ジョー・ガリにするか悩んだ取締役会は、ビル・キャンベルさんに実際に会社を見て判断して欲しいと依頼します。

 

「ビルが出した結論は、ガリは報酬やプライベートジェットなどの特典にやたらとこだわっている、従業員はベゾスを慕っている、というものだった」260ページ

どちらが優れたチームを作れるか?もうお分かりですね。(^_-)-☆

 

最後にもうひとつ。

親友とは、何でも気兼ねなく話せる人です。何があってもいつもそばにいてくれる人です。ビルは私たち一人ひとりのために時間をつくってくれました。みんなと同じ1日24時間をすごしていたはずなのに、どういうわけか、そんな一人ひとりに寄り添う時間をいつも見つけてくれました。46ページ

ビル・キャンベルさんは、スティーブ・ジョブズさんが病に倒れた時も、毎日彼に会いに行きました。

 

大切な人が苦しい状況にいる時、何もできなくても、そばにいてあげることが大切なんだということを、ビル・キャンベルさんは気づかせてくれました。

 

 

1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え