マリィのハッピー読書手帖

本の書評や、漫画、映画の感想を書いています。

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」新井紀子の書評・要約・感想

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 「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」で、読解力のないAIが、読解力のない人間の子供の強力なライバルになる可能性があることを示唆している。東ロボくんや、RSTを通して、AIに負けない方法を検証している。

 

 

新井紀子さんの紹介

新井紀子さんは「数学基礎論」を専門分野とする数学者です。新井紀子さんは、10年計画で「東ロボくん」というAIを東大に合格させるプロジェクトを2011年から開始しました。

 

新井さんは、2010年に「コンピューターが仕事を奪う」を出版し、AIが人間の仕事を奪う懸念を発信した第一人者です。出版当時、誰もこれを現実に起こることとは認識してくれず、著書はSF本のコーナーで売られていました。

 

そのことに危機感を持った新井さんは、「東ロボくん」を通して、AIはどこまでできるのか?又はできないのか?を解明して、人間はAIに代替されないためにどんな能力を持たなければならないのかを検証して、日本人の人々に来るべきAI時代に先駆けて、準備を促したかったそうです。

 

↓新井紀子さんの本

 

 ↓新井紀子さんの新刊

AIに負けない子どもを育てる

 

近藤誠一さんの紹介

今回ご紹介する本は、テレビ東京「News モーニングサテライト」の10月15日放送の「リーダーの栞」で紹介されていた、「国際ファッション専門職大学」の学長である近藤誠一さんが推薦する本です。

 

近藤誠一さんは、文化庁長官、ユネスコ大使などを歴任された後、大企業の取締役や、各界の理事長、教授など多岐にわたる活躍をされています。2016年には瑞宝重光章を受賞されました。

 

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」を読もうと思ったきっかけ

近藤誠一さんは、新井紀子さんの本とは主張が正反対の「アルゴリズムが世界を支配する」という本も同時に紹介されていました。

 

理由は、将来を担う若者に、柔軟な心を持って欲しいからとのこと。私は、AIに関する本は一冊も読んだことがなかったので、実際に二冊を読んで、読み比べてみたかった。

 

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」の要約

はじめに
第1章 MARCHに合格-AIはライバル
第2章 桜散る-シンギュラリティはSF
第3章 教科書が読めない-全国読解力調査
第4章 最悪のシナリオ
おわりに

新井紀子さんの主張

その1(AIの定義)

「AI」は、正しくは「AI技術」といいます。

一般的に「AI」と聞いて私たちが連想するのは、近い将来、人間のような意志を持ち、自発的にものを考えたり感じたりする「AI」の姿を想像しますが、今現在そのような「AI」は存在しません。

 

そして、今現在の技術の延長線上には、これから将来も、人間と同じような知能を持った「AI」は作れないし、シンギュラリティは来ないと新井さんは、断言されています。

 

今現実に存在する「AI」とは、コンピューターであり、原則として四則計算(足し算と掛け算)しか出来ません。「AI」は数学で解明出来ることしか解決できない計算機でしかありません。

 

「AI」は、読解力がありません。「AI」は、文章を読んで理解することが出来ません。数学の世界では、「物を理解するということが何なのか」解明できないからです。

 

私たちの世界で起きることの中で、数学で解明できることは、「論理、確率、統計」に限定されています。この中で「論理」に関しては、「AI」に物を教えるのが極めて困難なため、現在の「AI」は、「確率・統計」に特化して進化しています。

 

その2(AIの実力)

「東ロボくん」は、偏差値65の壁は超えられず、東大には合格できないと新井さんは結論づけました。しかし、MARCH合格レベルには既に到達しています。

 

MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)の他、関関同立(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)を含む、23大学の30学部53学科で合格可能性80%の判定を受けてます。

 

これは、大学進学希望者の上位20%に当たるそうです。

 

その3(AIのしくみ)

「AI」は、考えたり、意味を理解することなく、膨大なデータの中からキーワードで参照して、ヒットした記述の中から、答えに相当する文章を見つけてきます。それは確率と統計に基づいて行われます。

 

AIには、人間のような常識が理解できない(フレーム問題)ため、膨大なデータはそのままでは利用できず、「教師データ」といって、優れた人間の研究者たちが、AIに教える論理データを忍耐強く作成しています。

※ 論理=自然言語処理

 

その4(身に着けるべき能力)

AIのような読解力がない子供が増えています。読解力がない人は、AIが強力なライバルになる可能性が高くなります。

 

読解力とは

係り受け
照応
同義分判定
推論
イメージ同定
具体例同定

このうち、下の4つ(同義分判定、推論、イメージ同定、具体例同定)は、AIが苦手とする分野です。

 

↓例文はこちらで確認できます。ぜひ、トライしてみてください。

 

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」感想

子どもが可愛い

新井さんの娘さんが、授業で、「星の光は宇宙では、地球に届くまでに時間がかかること」「1年に光が進む長さを1光年」ということを学びました。

 

娘は先生に質問しました。「太陽はどうですか?」

 さすが新井さんのお子さん。賢い質問。( ˘•ω•˘ )

 

 先生はちょっと困ったような表情をされたそうです。すると、場の空気を読むことに長けた男の子が、

「ばーか、太陽の光はいま光ったに決まっとるじゃろ」と言ったのです。

 男の子は、言ってることは間違ってるけど、小さいのに場の空気読むってすごいよね。( ˘ω˘ )

 

その大声を機にたくさんの生徒が口々に「そうじゃ、そうじゃ、太陽は今に決まっとる。さっきのは星の話や」と言い出し、結局、太陽は今光ったことに「決まった」そうです。

太陽は星とちゃうんかい!(^_^;) 

 

人間とは全く異なったアプローチで、問題に取り組むAI。この本を読んでいて思ったのは、まるで投資の世界だなー。投資も論理では説明できない、確率と統計の世界。だからAIが投資の世界で活躍しているのかな。

 

東ロボくんが最も苦手な教科は「英語」。これは私たち日本人が英語が喋れない理由に似ているのかも。と思いました。結局は、しくみや原理を分かっていないと、いくら単語や文法を丸暗記しても、過去問をおさらいしても、しゃべれるようにならない。東ロボくんが、英語のしくみを理解できないように。

 

それか、東ロボくんの教師データを作っている人が日本人で、英語が苦手な人だから、東ロボくんも英語が苦手なのかも。(・o・)

 

教師ありのディープラーニングにおいて、AIは決して教師データの精度を超えることはできません。教師データの設計者が、悪意に満ちていれば、あるいは鈍感ならば、その悪意や鈍感さをAIは増幅していきます。そう、マイクロソフト社のチャットボットTayがナチズムを礼賛したように。

AIは、文章を読んで理解することが出来ないし、「暑いときは寒くない」という、人間なら当たり前にわかる常識が理解できない。

 

いくら、超高速スーパーコンピューターが現れても、インターネット上に膨大な情報が溢れていても、AIに読解力がない以上、人間なしには、AIは問題を解決することは出来ない。

 

つまりは、東ロボくんは当てずっぽうで解答しているわけで。読んだふり、分かったふりなだけですよね。でも、そんなAIでも大学に入学できてしまうということが驚きです。

 

それから、「おわりに」で著者が言及していた通り、教師データに悪意があれば、どんなAIでも教育できてしまう可能性がとても心配です。

 

「自分は数学が苦手だから文系に行ったつもりだったけど、そもそも数学の教科書が読めないタイプだったのかもしれない」

「読めない部分は飛ばして、なんとなく全体をわかったつもりになっているだけだったのかもしれない」

読むことが仕事の方でもテストを間違えることがあります。その方たちも最後には、自分を振り返ってどこに原因があるのか考えておられました。

 

私も読解力テストにトライしてみましたが、早とちりで間違うことが多かったです。よく読めば、答えは書いてあるので、分かるはずなのですが、1回読んだだけでは、よく分からない例文が多いです。

 

RST(リーディング・スキル・テスト)で分かったこと。

・文章は、きちんと理解できるまで、よく読むこと。
・分からない言葉は無視したりしないで、調べて内容を理解すること。
・本当に理解できたかどうかは、人に教えてみたり、感想文を書いたり、アウトプットすることが大切。

 

「読解力」

文章を読んで理解したり、人の話を聞いて理解する能力というのは、人間なら誰でも当たり前のように持っているけれど、これってすごい能力なんだなーと今更ながら気づきました。もっと自分の能力を大切に育てて、神様から与えられた能力を使っていかなきゃー。と思いました。(´▽`)

 

でも、意識して磨かなければ、この能力は退化してしまい、まるでAIのようになってしまう。ということもこの本を読まなければ気付かないことでした。恐ろしいことです。

 

未来のことを100%当てることは誰にもできない。AIが読解力がないからと言って、慢心するのではなく、まずはAIの現状を正しく把握して、自分の頭で考えて、AIに負けないように、努力しようと思いました。

 

【2019年ビジネス書大賞 大賞】AI vs. 教科書が読めない子どもたち

 ↓新井紀子さんの新刊

AIに負けない子どもを育てる