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ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんの愛読書「ロウソクの科学」の書評・要約・ネタバレ・感想

書評

「ロウソクの科学」は、ロウソクが燃える不思議な現象を、実験を通して若い科学者に向けて、クリスマスに講義を行った講義録です。

ファラデーさんが伝えたかったことは、考える力と着眼点と研究深心だと思います。

吉野彰さんの紹介

吉野彰さんは、リチウムイオン電池を開発した方です。2019年のノーベル化学賞を受賞されました。2004年には紫綬褒章を受章されています。吉野彰さんは、時代のニーズに合ったものを開発するということを念頭に置いていらっしゃっていて、10年後、20年後に研究が成功した先の未来に必要とされているだろうものを開発しようと努力されていました。

でも簡単ではなかったようです。リチウムイオンにターゲットを絞る前に、3回ほど失敗したようです。それからも幾度となく本人曰く「悪魔の川」や「死の谷」を乗り越えてきたそうです。そこを越えて製品化しても「ダーウィンの海」で立ち止まる…。大変な苦労を乗り越えての受賞だったんですね。

著者 マイケル・ファラデー氏の紹介

ファラデーは、労働者階級の両親のもとで、イギリスで育ちました。その頃のイギリスは産業革命の時代です。子供の頃のファラデーは、労働者階級ゆえ、読み書き程度の教育しか受けられませんでした。13歳の時に書籍商・製本業の店の使い走りとして無給で雇われ、後に製本工の見習いとなります。そこでたまたま見つけた電気関係の本に興味を持ったのが、科学研究者としての始まりです。

当時のファラデーの身分からすると、科学者として生計を立てるというのは不可能なはずだったのですが、幸いなことに雇い主のリボーや、リボーの店のお得意様である、裕福なダンスがファラデーを可愛いがり、当時の彼の身分としては考えられない勉強をさせてくれました。

その経験から、科学者として身を立てたいという願望が彼を突き動かし、彼のチャレンジ精神と運で、王立研究所の実験助手の仕事を獲得します。雇い主のデイヴィーのもとで、ファラデーは科学者としての経験を積みました。

「ロウソクの科学」の反響

吉野彰さんが、会見で「科学に興味を持つきっかけ」となったと紹介されたのがマイケル・ファラデーの「ロウソクの科学」です。その後、本は売り切れが続出となり、出版元の岩波書店とKADOKAWAでは、今後増版予定となっており、KADOKAWAは、「ロウソクの科学」を易しく解説した関連本を出版する予定だそうです。

「ロウソクの科学」は、平成28年に大隅良典さんがノーベル医学・生理学賞を受賞した際にも問い合わせがあったそうですが、今回の方が反響が大きいそうです。

↓マイケル・ファラデーの本

「ロウソクの科学」を読もうと思ったきっかけ

「ロウソクの科学」がやたらとアマゾンランキングの上位にいるので、読んでみようと思い、図書館に行くと、司書の方が、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんの愛読書だということを教えてくれた。

「ロウソクの科学」の要約・ネタバレ

序文
第一講
ロウソク 炎とそのもと-構造-動きやすさ-明るさ
第二講
ロウソク 炎の明るさ-燃焼に必要な空気-水の生成
第三講
生成物 燃焼によって生じる水-水の性質-化合物-水素
第四講
ロウソクの中の水素-燃えて水になる-水の他の部分-酸素
第五講
空気中の酸素-大気の性質-ロウソクからの他の生成物-炭酸とその性質
第六講
炭素つまり木炭-石炭ガス-呼吸-呼吸とロウソクの燃焼との類似-結論

ここからネタバレです。これから本を読もうと思っている方は読まないでください。(6割くらいネタバレ)

ロウソクの不思議

疑問1

ロウソクの本体(白い持ち手の部分)は固体で、燃料で出来ているのに、芯のところで炎があっても白い部分は燃えません。それはなぜか?

疑問2

固体では燃えない燃料がどうやって芯までたどりついて、燃えるのか?

疑問3

ロウソクは、燃えると最後はきれいに消えてなくなってしまいます。それはどうしてか?

ヒント

上昇気流
毛管引力
燃料の気化
蒸気の発生
蒸気の燃焼
完全燃焼
不完全燃焼
炭素の生成
炭素の燃焼
水の生成
熱の作用
水素の生成
水素の燃焼
酸素
窒素
二酸化炭素
一酸化炭素
化学親和力

ネタバレ

ロウソクの燃料は、液体や固体の状態では燃えない性質を持っています。ロウソクは、燃料が気化して、蒸気の状態になってはじめて燃焼します。

ロウソクの芯の根元には、お椀状になった部分があり、お椀の中には液体の燃料が入っています。外側のお椀状態の燃料は外側からの冷気で冷やされ、固体のままです。

炎が下に行こうとすると液体と固体の燃料に冷やされ消えます。炎の熱は上昇気流により上方向に流れるので、熱い空気は芯の下には行きません。

ロウソクに火をつけると、炎で温められ、液体になった燃料が、毛管引力により、芯までつたって登り、芯の中ほどで、熱によって温められて蒸気となり、炎の外側の新鮮な空気に触れて、燃焼します。蒸気がある場所の炎は暗く、外側に行くほど明るく輝きます。

ロウソクの明るさは、ロウソクに含まれる炭素という成分が、固体の状態で燃えて輝くからです。ロウソクの炎の熱が蒸気を分解して、炭素の粒が遊離します。炭素の粒は熱と酸素を加えると、輝いて燃焼します。最終的に炭素は空気中の酸素と結びついて二酸化炭素となり、空気中に散ります。

ロウソクを燃やすと、水蒸気が発生します。水蒸気の元となる水素はロウソクの成分のひとつです。水素は空気中の酸素と結びついて水(水蒸気)になります。

ロウソクを燃やす時に空気が不足すると、黒いススが生じます。黒いススは炭素です。黒いススは不完全燃焼です。炭素は空気が沢山あるときは炎を明るくします。酸素が足りないと、炭素は燃え残り、粒になって空気中に放出されます。

炭素の粒が遊離する前に新鮮な空気と十分に混ざると、炎は青白くなります。明るく光りません。

ロウソクが完全に燃焼すると、炭素の燃えかすは全く残らず、水蒸気が生成されます。

ロウソクが消えてなくなるのは、燃えるときに、ロウソクの成分である炭素と水素がそれぞれ酸素と結びついて、二酸化炭素と水蒸気に変化して空気中に散るからです。

窒素は、酸素の性質を抑制する働きがあります。窒素が空気中に存在しなければ、機関車はボイラーごと燃えてしまいますし、暖炉の鉄格子が石炭以上に勢いよく燃えだしてしまいます。

※ ロウソクのネタバレ部分の内容は、自分では正しい内容を心掛けたつもりですが、もしかしたら、部分的に間違いがあるかも知れません。素人なので、その点はご了承願います。

「ロウソクの科学」の感想

「ロウソクの科学」では、ファラデー先生は、沢山のクイズを出題します。でも答えをすぐには教えてくれません。ヒントはたくさんくれます。実験が延々と続くので、科学に興味がない人は辟易すると思います。

大失敗は、失敗しなければ学べなかったようなことを私たちに教えてくれます。こうした経験を通じて、私たちは成長して自然科学者になっていくのです。

何か結果が得られたとき、とくに新しい結果が得られたときには、皆さんが必ず、
「何が原因なのだろう?」
「なぜ起こったのだろう?」
と問い続け、最後にその理由を明らかにしてほしい、と私は願っています。

ファラデー先生は、実験を通して、将来の科学者の卵さんたちに、失敗から学び、自分で考える力を養って欲しいという思いを込めたんだと思います。

ファラデーさんは元々、貧しい身分から、強い意志で科学者になる夢を叶えた人なので、うまくいかないことがあっても簡単には諦めません。

知識も読み書きが出来た程度のレベルから、外国語や化学の専門用語が理解できるまでに到達するには、どれだけ勉強したかがうかがわれます。

こうやって私たちはこれらの異なる物質の作用を学び、そうしてそれらの物質に、私たちが知りたいことを語らせる方法を少しずつ理解してきたのです。

研究というのは、分からないことを解明する手探りの作業。沢山の実験を通じて、気の遠くなるような工程を経て、事実は明らかになり、立証されていく。

私たちは水を、それを構成する元素にまでさかのぼって調べました。同じように、ロウソクの働きによってつくられた二酸化炭素を構成する元素がどこからくるのかを調べなければなりません。これはいくつか実験をすればわかってくるでしょう。

水について調べるとは、水の科学について学ぶとは、それを構成する元素にまでさかのぼって調べるということ。とても根気がいる作業です。

ファラデーさんは、実験を通して、若い科学者たちに、研究に対する考え方、発見に対する着眼点、次にどうするか?を丁寧に教えています。

ろうそくが燃えることを不思議と思う心がまず大切だと思いました。普段何気なく当たり前のように思っている事柄が、奇跡のような形で成り立っていることにまず、気付くことが大切。

・誰も気づかないことに気づく能力

・発見した時に、次にどうとらえるか?何をするか?

・どこに着眼しなくてはいけないのか?

ファラデーさんは、自分の経験を、若い後継者に伝えようとしていたんだと思いました。

結論が分からず、実験が延々と続くので少々読むのに疲れます。でもこれが研究なんだと思いました。結論が分からないまま、自分の予測を信じて研究を続けるという。この本を読むことで研究者の気持ちがほんの少しは分かるかも知れません。

 

この記事を書いた人
はづき

化粧品成分について、とことん調べるのが好きです。

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